« 今年はトマト | トップページ | 五目豆 »

蜂には刺されないようにしなくちゃ

THE BEE(演出:野田秀樹)ストーリーを含んでいます。
内容を知っても良いという方はお読みください。

ポキポキと折られていく子供の指。
なんの恐怖もなかった平凡な会社員の日々。
人質になって、レイプされる妻。
子供の誕生日。
自分から差し出す残りの指。
恐怖、興奮、緊張、痛み、屈辱。
原作は筒井康隆の「毟りあい」
なんとも、凄まじい。
ストレスだけを集めて、人はどうなるか実験してみよう…なんて
そんな生やさしいものではなかった。
残酷。
快感。
狂気。

自分の中の何と向かい合うだろう。
深いところに眠っているのは、どんな心理だろう。
認めたくないかもしれないけれど、
だれでもあんな風になるかもしれないと、
男と女を観て、思った。

でも、ただの残酷ではなく、
根底にその行為による狂気が見えるから、
グロさは残らない。

蜂が来た。
いつ刺されても、おかしくない距離だ。
どうやって、このピンチから脱出できるだろう。
刺す。毒で冒す。刺される側か、刺す側か。
何かに刺されて、まわる毒
また同じことをされたら、アナフィラキシーショックをおこす。
二度と信じるものか。
二度と愛するものか。
死にたくない。

残酷な眼差しの中に映る狂気は、
理性のスイッチをオフにした人の姿なのだろうか。
人を傷つけるのは、そんなにも快楽なのだろうか。

あんな芝居が作れるのは、よっぽど幸せだってことだよね。
大切なものがあるってことだよね。
私が言うと、
「うーん、それとも、ちょっと違うけどなァ」
と野田が言った。
私は悲しい時に悲しい詞は書けないよ。
「それは、そうだな」
楽屋で話した。それは、ちょっと芝居の論点からは、ずれていた。
「みんなでずらーっと、並んで観るような芝居じゃないよな」

今頃になって、泣きたくなった。
誰かの胸をかりて、泣きたくなった。
恐い蜂が、頭に浮かんできた。

「夢も希望もないひどい芝居ですが、大丈夫ですか?と言っておいて」
確かに2日前に、野田秀樹は恩師への伝言を、メールにこう書いてきた。

ロンドンバージョンは、どんな世界だろう。
今度は私、何に、気づくだろう。
人を愛していると感じられる自分でよかったと思う。
野田秀樹のあの演技は、すごい。

|

« 今年はトマト | トップページ | 五目豆 »

日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。