胸についた炎
ふたつの恋の物語
「許さん、僕のこと書いてよ。僕の詞を書いて」
友達にそう言われていた。2度も3度も言われていた。
今日、また言われた。そんなに、うれしいかねーって言うと、
「うん」
って、友達は笑う。
少年の時の心が、満たされるのだろう。彼女の話をするときの友達は子供みたいだ。
「うっれしそうねー」
「うん」
「そんなに好きなの?」
「うん」
じゃあ、書きとめておくよ。
5歳の時、僕は初めて君と会った。
君を見て、僕は動けなくなった。君があまりにも可愛くて、君から目を離すことができなかったんだ。そのまま、何分も見とれていた。幼稚園の時だった。ひと目ぼれだった。
小学校の時も、中学の時も、君に片想いをしてた。振り向いて欲しくて、なのに打ち明けることもなく、見つめていた。
バイクを買った17歳のときだった。うれしくて君の家の近くで、バイクを停めて待っていた。約束していたわけじゃなかった。ただバイクを見せたくて、僕は君が通るかもしれない道で待っていた。
時間だけが過ぎていき、君はそこを通らなかった。
再会したのは、お互いの子供の入学式だった。胸についた火を消したくなくて、僕は手のひらで風をよけるように炎を隠した。
子供たちも卒業し、再び平凡な時が流れた。それでも僕はまた、君に会ってしまった。
忘れたことは、なかった君に、出会ってしまった。
僕たちはあまりにも遠回り。
過ぎてしまった時間を埋めるように
僕は君を抱きしめよう
僕を見つめてるまなざし
やっと君を幸せにできるんだ。
と、後半、歌っぽくしてみた。
うーん。ずっと、好きだったわけね、なんでもっと早く打ち明けなかったかねーと、私は思った。
そしたら、今日はこの話を聞いていた別の人間が、父の友人の話しをしてくれた。
父の友人はずっと、片想いの女の人がいたんだって。ずっと好きで、彼女が結婚したことや、
彼女が未亡人になったことや、どこに住んでいるかとか、ぜーんぶいつでも知っているんだって。
で、自分も今は奥さんと死別していて一人なんだって。
それなのに、彼女には連絡しないんだって。
誰か、連絡してやれよと思っているうちに、父は亡くなってしまったの。彼は今、85歳だって。
あなたは想っているだけの人ですか
やっと幸せにできるんだの人ですか
胸についた炎は誰かを待たせていませんか
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